研究

  私は、日本において人口減少や財政難が進む中で、どのようにしたら市民が公共サービスを持続的に受けることができるかという問題関心を有しています。現在は、こうした問題関心のもとに、(1)政府が提供する一部の公共サービスの廃止がどのような場合に社会において合意されるのかという点や、(2)市民社会組織による公共サービス提供とその影響に焦点を当てた研究を進めています。
 (1)人口減少や財政難を背景として、今後も政府が持続的に公共サービスを供給するために、必要性が低下した政策を廃止することがあり得ます。政策廃止とは政策過程の段階モデルでは最終段階に位置付けられる現象ですが、廃止が実際にどのようにして行われているのかについては体系的な研究はあまり行われていませんでした。私は都道府県におけるダム事業、自治体病院事業、土地開発公社を分析対象として、政策廃止がどのようにして議題に上がり、決定されるかを事例分析や質的比較分析を行うことにより明らかにしました。現在は、どのような場合に政策廃止が地域社会で合意されるかについて、市区町村における公共施設等を対象とした研究を行っています。
 (2)上述したように、政府によって担われてきた公共サービスが縮小される中、公共サービスの新たな担い手としてNPO・市民団体等の市民社会組織が注目されています。私は、これまでに市区町村の行政や市民社会組織に対して行った大規模なサーベイデータを分析し、両者の関係性を明らかにしています。特に関心を有する点としては、市民社会組織の政策参加状況と、市民社会組織が政策実施過程に参加するだけではなく、政策形成過程への参加を行うことにより、行政と市民社会組織による相互行為的なネットワークを築いているかという点であり、これらについて都市間、団体間比較や時系列での比較を行いました。現在は、国際比較に取り組んでいます。

著書(単著)
柳至(2018)『不利益分配の政治学‐地方自治体における政策廃止‐』有斐閣
・書評一覧
『沖縄タイムス』2018年11月24日(「話題本題」)、木寺元先生
『図書新聞』(3380号)2018年12月22日(「2018年下半期読書アンケート」)、竹中佳彦先生
『書斎の窓』(662号)2019年3月号、北山俊哉先生
『年報政治学2019-Ⅰ』曽我謙悟先生
『ファイナンス』2019年9月号、渡部晶先生


著書(分担執筆)
辻中豊・伊藤修一郎編(2010)『ローカル・ガバナンス‐地方政府と市民社会‐』木鐸社
 第4章「地方政府における外部委託の状況」(柳至)77-93頁
 第5章「参加制度の導入と市民社会組織の政策参加」(柳至)95-110頁


論文
柳至(2019)「『目標』を示した地方自治体:公共施設等総合管理計画の分析政策科学・国際関係論集』19号、19-39頁
柳至・小橋洋平(2017)「行政と協働する団体は行政を統制しないのか」『レヴァイアサン』61号、137-156頁
柳至(2014)「政策の存在理由が地方政治家の行動に与える影響‐地方自治体における政策・組織廃止を事例にして‐」『年報行政研究』49号、160-181頁
柳至(2014)「首長と議会の対立を抑制するもの‐地方自治体におけるダム事業を事例にして‐」『政策科学・国際関係論集』16号、63-99頁
柳至(2012)「自治体病院事業はどのようにして廃止されたか」『公共政策研究』12号、48-60頁
柳至(2012)「地方自治体における政策・組織廃止の実証研究‐二重の制度下のアクター間関係に着目して‐」博士学位論文・筑波大学人文社会科学研究科、全212頁
柳至(2011)「地方自治体における組織廃止の過程‐関東6県の土地開発公社改革を事例にして‐」『季刊行政管理研究』134号、19-32頁


報告書・その他
岡田勇・久保慶明・柳至(2019)「県民投票と県民の意識‐投票に行った人、行かなかった人、それぞれの選択‐」『世界』921号(2019年6月号)72-81頁
辻中豊編(2019)『第四次団体の基礎構造に関する調査(日本・社会団体調査)』筑波大学
第8章「中央政府の政策過程における団体のアドボカシー活動」(柳至)135-149頁
辻中豊編(2015)『第三次団体の基礎構造に関する調査(日本・社会団体調査)』筑波大学
  第7章「官民関係の諸相‐融合関係の持続と変容‐」(柳至)122-139頁
  第9章「地域間比較の視座」(柳至)161-170頁
辻中豊・伊藤修一郎編(2009)『市民社会構造とガバナンス総合研究全国自治体 (市区町村)調査報告書』筑波大学
  第4章「市区町村の概要」(柳至)51-64頁
  第7章「制度やサービスの実施状況」(柳至)93-119頁


学会報告
2019年7月:日本選挙学会2019年度研究会(東北大学)「サーベイ実験を用いた2019年沖縄県民投票の分析-選択肢デザイン効果と投票参加効果-久保慶明氏(報告代表者)、岡田勇氏との共同報告
2019年6月:日本NPO学会第21回年次大会(龍谷大学)「市民社会組織‐政府関係の国際比較‐Japan Interest Group Studyを用いた分析‐」
2019年5月:日本行政学会2019年度総会・研究会(新潟大学)「なぜ市民社会組織による行政サービス提供がアドボカシー活動を促進するのか」
2013年11月:第26回沖縄法政学会(琉球大学)「沖縄県における市民社会組織の政策参加-全国平均との比較から-」
2013年5月 :日本行政学会2013年度総会・研究会(愛知大学)「政策・組織の存在理由が地方政治家の行動に与える影響‐ダム事業・自治体病院事業・土地開発公社の廃止を事例にして‐」全19頁
2010年6月 :日本公共政策学会2010年度研究大会(静岡文化芸術大学)「行政的回路を通じた中央政府への地方政府の利益の表出‐戸倉ダム事業の中止を事例として‐」『日本公共政策学会2010年度研究大会報告論文集』、209‐223頁


学会等討論
2018年5月:日本行政学会2018年度総会・研究会(東京大学)分科会E「自治体における組織と統制」
2017年3月:関西大学法学研究所第52回シンポジウム(関西大学)「官僚制vs.市民社会-より良きガバナンスの姿を求めて-


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