2012年度卒論総評(2013年3月)

今回提出された4本の卒業論文を以下、順に紹介する。

菊池まりや「女性の社会運動による政治参加-沖縄における女性反基地運動の発展と政策決定過程への参入を事例に-」は、政治過程への入力としての社会運動について、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」と「強姦救援センター REICO」という2つの運動に焦点を当てて分析した。社会運動研究の先行研究から理論的枠組としての政治的機会構造(POS)に注目し、「POSが単に社会運動の帰趨を決するだけでなく、逆に社会運動がPOSに影響を与えるような相互作用がある」ことを、現在進行中の女性による社会運動を事例として明らかにした。

島袋綾「開発途上国における地方レベルでの保健医療水準向上-アジア地域のプロジェクトを中心に-」は、国際社会における保健医療協力の課題として、地方レベルでの医療水準を向上させ、都市と農村の地域間格差を埋めることを取り上げ、その解決策として「三段階アプローチ」を提言する。保健医療協力のプロジェクトを、往診タイプ、保健所タイプ、病院タイプに分類した上で、タイ、ベトナム、カンボジア、中国、ラオスの関連プロジェクトをレビューし、2次医療機関に特化したプロジェクトがないことを指摘、リファラル・システムを強化するプロジェクトの必要を説得的に論じている。

鈴木青「中東・北アフリカにおける民主化運動-チュニジア・エジプトから見る民主化の波-」は、「民主化の波」から取り残された地域と考えられていたアラブ世界において、民主革命が「なぜチュニジアから始まりエジプトへと広がっていったのか」との問いを立てて、現在的な課題に取り組んだ。チュニジア・エジプトにおける民主化運動の歴史を丁寧に記述して、「起こるべくして起こった背景や要因」とそれ以外の背景や要因とを腑分けしようとした。過去2年間の事例の研究を上手に整理しているが、さらに、それ以前の民主化研究の蓄積や板垣雄三の「アラブ諸国体制」の議論と重ね合わせた考察が必要だった。

玉寄亜寿紗「農村開発プロジェクトから見る参加型開発の成功要因分析」は、4本中最も論文らしい日本語で書かれており、論文の構成もシンプルで破綻がない。開発援助の世界で現在も重要視されている「参加型開発」について、その矛盾や問題点を乗り越え、それをうまく機能させるための道筋を明らかにしようとした。女性や貧困層などの社会的弱者を含む住民組織が作られ、その組織が開発プロジェクトに強く関わっていること、プロジェクトの外部者が現地住民の知恵や技能に気付けること、そして外部者が柔軟性を持ち、工夫をし、外から持ち込んだ資源を最大限有効に活用すること、がその条件である。

以上4本の中から、島袋論文を星野ゼミの優秀論文に選定した。他の論文も捨てがたかったが、先行研究を丁寧に押さえていること、事例のタイプ分けや政策提言において独自性があること、図表を有効に利用していること、どこをとっても水準をクリアしていることが、島袋論文を選んだ理由である。(2013210日)

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