研究計画書の構成

A 星野ゼミ生のための研究計画書の構成

  • A 星野ゼミ生のための研究計画書の構成
    • 00 はじめに
    • 01 テーマ
    • 02 問題意識(テーマに至った背景)
    • 03 先行研究
    • 04 問題設定(問い)
    • 05 全体の構成(章立て)
    • 06 仮説(仮の結論)
    • 07 用語の定義
    • 08 理論的枠組み(説明の論理)
    • 09 分析単位の設定、サンプル・ケースの選択
    • 10 変数・指標、データソース
    • 11 仮説検証の手続き(説得の手順)
    • 12 まとめ、期待される成果
    • 13 文献目録
  • B 文献目録の書式
  • C 参考文献

00 はじめに

  • 研究論文・研究レポートを書くときは,普通,研究計画書(Research Design を書くことから始める。研究計画書には,この論文・レポートにおける研究テー マは何なのか,これまでにどのような研究・文献があるのか,どのようなデータ が必要なのか,データの入手可能性はどうか,どのような分析方法でそのテーマ に取り組むのかなどを書くことになる。
  • 研究計画書は,実際に研究を始めたときに,研究者の指針として大変役に立つ のだが,それが十分に詳しく書かれていればいるほど,より役立つものとなる。 また、研究を進めるプロセスには人からの意見,コメントを受けることが不可欠 であるが,そのためにもこの研究計画書は役に立つ。研究計画書が詳しく書かれ ていればいるほど,研究をよりよいものにするための具体的で適切なコメントが もらえる可能性が大きくなるといえよう。
  • 繰り返しになるが,研究計画書を書く段階で研究の詳細が明確であればあるほ ど,その後の研究はよりいっそう容易になる。なぜなら,そのことによって研究 の方向性がよりいっそう明確となり,研究上の様々な障害に対し前もって対策を 考えることが出来るからだ。その意味で,研究計画書は,特定の問題に関する研 究がどのように処理されていくかを記述した,一種のステップ式プログラムの集 合体といってもよいだろう。
  • 研究計画書の分量は、3年次生の場合、4000字以上、4年次生の場合、8000字程度で、 以下のような13のセクションを含むものとなる。

01 テーマ

  • タイトル、サブタイトル
    • テーマ名は簡潔で、しかもその研究計画の内容を端的に示すものが望ましい。必要に応じてサブタイトルをつける。
    • 例えば、主タイトルが一般的な場合には、サブタイトルをより具体的な内容にすると良い。
    • タイトルについてーレジュメの作り方(その1)Thanks to 広島大学遠矢先生)

02 問題意識(テーマに至った背景)

  • 研究者が興味深いと思った問題(テーマ)はなにか?テーマに至った背景を記述する。
    • その問題はどのような背景を持っているか?つまり,どのように他の政治的あ るいは社会的な現象と関連しているか?
    • その問題は,なぜ興味あるものなのか?また,なぜ研究の価値があるのか?
    • 例えば、その問題に対して一般の人たちが持っている考え方はどのようなものなのか?あなたは、その考え方に賛成なのか?反対なのか?
    • その他、テーマに至った背景には個人的な動機があるかもしれない。

03 先行研究

  • テーマに関する主な先行研究を、必要に応じて2~4に分類し、その特徴(主張、方法など)を比較する。
    • その問題に対するこれまでの研究として、どの程度の文献があるのか?
    • これまでの研究の結果にはどのようなものがあるのか?
    • それらの文献の答えは一貫したものなのか?それとも、対立する意見が存在するのか?

04 問題設定(問い)

  • 冒頭で提示したテーマに関して、自分がこの論文の中で答えようと思っている「問い」を列挙する。
    • 冒頭で提示したテーマに関して,これまでの研究ではまだ解明されておらず, 自分で調査することができる問題で,自分がこの論文・レポートの中で答えよう と思っている問いを列挙する。これらの問いは,次節で提示する仮説と直接関連 付けるようにすることが望ましい。

05 全体の構成(章立て)

  • 研究論文の章立てを記すことにより、論文の骨格を明らかにする。

06 仮説(仮の結論)

  • 先に列挙した「問い」の中で、この論文において「答え」を与えようとするものについての「仮の結論」を提示する。必要ならば、仮説についての説明やそれらが導かれる論理的根拠を示してもよい。
    • 仮説にはあまり多くのテーマ(例えば,3つ以上の)が含まれていてはならな い。全体で,少なくとも3つ以上,多くとも12を越えない範囲で仮説を設定する のが適切だろう。
    • 仮説はできるだけ簡潔で明白でなければいけない。要するに,専門用語を避 け,特定の予想される関係について,わかりやすい言葉で記述するのである。
    • 仮説は,できるだけ「もし ~ならば,~する(である)」の形で述べるべき であり(例:「もしある2国が民主主義国同士であれば,それ以外の2国間より も戦争をする可能性は少ない」),前節で列挙された研究のための問いと直接関 連していなければならない。
    • 「仮説」についてThanks to 広島大学遠矢先生)

07 用語の定義

  • 研究計画の中心をなす用語(例えば、仮説の中で使われている用語)のうち、率直な意味を持っていないものすべてを定義する。特に、仮説の中で使われている用語については、概念的定義(conceptual definition)と操作的定義(operational definition)の両方が必要である。
    • これは研究計画の中でも大変重要な部分である。特に,社会科学的な研究にお いて使われる言葉の多くが曖昧であるため,より重要な部分となる。
    • 用語の定義には概念的定義(conceptual definition)と操作的定義 operational definition)の2つがある。率直な意味を持っていないすべて の単語は,両方の意味において定義されなくてはならない。概念的な定義なしで はその言葉の意味を汲み取るような仕方で操作的な定義がなされたかどうか,誰 にもわからないので,操作的定義または指標(indicators)のリストを示すだ けでは不十分である。
    • 概念的定義は,一般に,「A(定義されるべき用語)はB(Aを含む一般的事 物)のうちC(他とは違う特徴を持ったもの)である」という形で行なわれる。 また,「A(その概念)はDではない」という限定の仕方も,理解の助けにな る。
    • 例えば,「民主主義」を「人々が国家の統治に参加する政治体制であり,競争 的な複数政党制,普通選挙の定期的な実施,そして言論・集会の自由によって特 徴づけられる」というように定義することである。その際,「イデオロギーとし てのデモクラシーあるいはHeld1987)が提案したデモクラティック・オート ノミーのような包括的な民主主義概念の代わりに」というように限定すると,概 念的定義の理解の助けになり,論旨の混乱を避けることができる。
    • 操作的定義は,例えば「民主主義」をどこで決めるのか,民主化の程度をどの 面から測定するか(例えば「参加」の面から測定する)といった定義である。こ の操作的定義によってデータの選択が導き出される。(参考:星野英一 [1998] 「民主化と米国の対外援助」『琉球大学法文学部 政策科学・国際関係論集 創 刊号』)
    • もちろん,すべての用語を定義することは不可能である。しかし,少なくとも, 研究計画の中心をなす概念(例えば,仮説の中で使われている概念)については 定義づけを行うべきだろう。

08 理論的枠組み(説明の論理)

  • 論文において選択された説明の理論的枠組みの特徴やその理論的な前提について記述する。また、他のモデルと比べて何故その枠組みが選択されたのかを説明する必要もある。さらに、仮説を検証する際にこの枠組みがどのように議論の筋道を立ててくれるのかを記述することができれば、なお良い。
    • 一般に,社会科学的研究における「説明」は理論的な枠組みに依存している。 何故ある変数とある変数との間に特定の関係があるのか或いはないのか,という ことを我々に示してくれるのがその理論的な枠組みなのである。この理論的な枠 組みとしては,システム分析やゲーム理論,認知に関する心理学的理論,意志決 定論あるいは政策決定論,経済的人間の仮定などがある。
    • これらの理論的な枠組みの中には,より限定的なモデルが含まれているのだ が,それらの多くはいくつかの理論的な枠組みの組み合わせである場合が多い。 (たとえば,システム理論には,均衡理論,コミュニケーション理論,そして構 造機能主義の理論などがあり,それらはそれぞれの仕方で行動を説明しようとす るのである。)
    • たいていの場合,研究者はある特定の問題を分析するために,ある特定のモデ ルを選択する。したがって,そこで選択された枠組みの特徴やその理論的な前提 について記述しなくてはならない。また,他のモデルと比べて何故その枠組みが 選択されたのかを説明する必要もある。
    • また,仮説を検証する際にこの枠組みがどのように議論の筋道を立ててくれる のか,を記述することも重要である。

09 分析単位の設定、サンプル・ケースの選択

  • 「問いー仮説」に関わる分析レベル、観察の単位を明らかにする。全数調査であれ、サンプリングであれ、ケース・スタディであれ、分析・観察の対象を特定する(または特定する方法を明らかにする)。
    • 「問いー仮説」に関わる分析レベル、観察の単位を明らかにする。国際システム、国家、サブナショナルな主体、個人、あるいは1組の国家(Dyad)かもしれない。
    • 分析・観察の対象を特定する。例えば、国レベルの集計データを利用するなら、どの年・どの国を選ぶのか、明らかにする。全数調査であれば、そのことを明示する。
    • サンプリング調査の結果を分析するのであれば、どのような母集団からどのようなサンプルを選ぶのか、を詳しく書く。例えば、どのようなサンプル選択の手法を採用するのか、どのような層化方法を利用するのか、どの程度のサンプル規模を選ぶのか、など。
    • ケース・スタディであれば、どのサンプルを対象とするのか、それはどのような基準で選ばれたのか、そのようなサンプル選択の長所・短所にも自覚的であると良い。

10 変数・指標、データソース

  • 仮説に含まれている用語を操作化した変数(variables)として使われる指標(indicators)を列挙する。それぞれの指標について、どのようなデータ・資料を採用するのかを述べる。
    • 仮説に含まれている用語を操作化した変数として使われる指標(indicators が,ここに列挙される。研究には再現性を要されるので,このリストは,研究を 立案した本人でなくても同じようにこの研究が行えるように,必要なものの全て が列挙されなくてはならない。
    • もしある変数が結合されたものであるなら,このリストには必要なあらゆる指 標が列挙されなくてはならない。例えばそれが国家間の合意のレベルとして操作 化されたものなら,国連における投票や特定分野の対外政策といった,その合意 のレベルを示す必要な指標が列挙されることになる。
    • 研究のための資料は,データ・ソースがどのような性質の物でなければならな いかを明確にしたのち,はじめて選ばれるべきである。どのような資料が含まれ るのか?それはあなたの目的にあっているだろうか?前述したように,操作的定 義を行うことにより,どのようなデータを集めたらいいのかが決まる。
    • どのようなデータを選ぶかは分析の結果に影響を及ぼすので,単に「主たる情 報源は政府の文書である」とか,「国連統計年鑑を利用する」と述べただけでは 不十分だ。「この変数については,(1)一人当たり国民総生産,(2)平均余命 を用いる。資料は,World TableWorld Bank, 1995)を利用する」というよ うに具体的に述べる必要がある。
    • データ選びにあたっては,それが存在するのかどうか,入手可能かどうか,そ の情報の信頼性(reliability)はどうか,などを評価しなくてはならない。また, データを入手する際の実際上の問題も論じるべきであり,データ入手に妥協が必 要になる場面もあるかもしれない。
    • データが時間軸に関して比較可能かどうか,もこの文脈のなかで言及されるべ き事柄である。研究において,単一のデータ・ソースを利用するのか,複数の資 料にあたるのかも明らかにすべきである。どちらにせよ,それぞれに長所・短所 があるので,そうした選択の理由を書き留めておくべきだろう。
    • データ収集の尺度(mode)もまたここで書き留めるべきだ。数量的な分析をす る場合,データの尺度が二値的なもの(nominal)なのか,順位尺度(ordinal なのか,あるいは間隔尺度(interval)なのか,は重要である。

11 仮説検証の手続き(説得の手順)

  • 資料を分析し結果を導くために、どのようなデータ分析の手法を利用するのか、どのようにして読み手を説得するのか、明らかにする。
    • 資料を分析し,結果を導くために,どのようなデータ分析の手法を利用するの か,明らかにしなくてはならない。
    • まず,考えなくてはならないことは,他の手法と比較してどの手法がもっとも 適切だと言えるのかということと,もっとも望ましいと思われる手法を使う際に 直面しなくてはならないかもしれない問題は何なのかということだ。
    • データは選ばれた方法の仮定に抵触しないだろうか?この手法は,提示した仮 説について結論を導くのに役立つだろうか?具体的には,どのようにその分析が 遂行されるのだろうか?
    • この節の内容がまさに研究の核心であるため,研究計画を書き上げる際にここ が最も難しい部分となることが多い。
    • 最後に,分析手法それ自身について簡単に述べ,それをどのようにあなたの データに適用するのか示さなければならない。仮説が検証されたと言うために は,どの程度の統計的な関係が見出されなければならないか,も記すことが必要 である。

12 まとめ、期待される成果

  • 選択された仮説が何故重要なのか、それらは選択された枠組みの中でどのように検証されるのか、そしてこの研究からどのような学問的な貢献が期待されるのか、を1~2段落にまとめる。

13 文献目録

  • テーマについて論じるために必要と思われる文献を全て順序良く並べる。
    • 要求された書式にしたがって,選択したテーマに直接関わりのあるこれまでの 研究文献をできるかぎり網羅し,仮説検証に必要な資料の所在をできるかぎり明 記すること。利用する統計手法についての簡潔な解説書や,直接ではないが関連 すると思われる文献についても,記載してかまわない。
    • 文献目録の書式には,いくつものタイプがあるが,指導教官と相談しながら, 自分のテーマに近い分野で良く使われている書式を一つ選び,一貫してその書式 に従うこと。「B 文献目録の書式」はそのようなタイプの一例であるが,実際 には「C 参考文献」に挙げてある本を参照すること。
    • 文献目録は論文が仕上がったときに完成すればよい「附録」ではない。文献目 録は研究の範囲,レベルなどを示すものであるため,人からコメントをもらう時 など研究内容の前に目をとおされる可能性の高い部分である。このようなことを 意識して,研究計画の時点からこの部分は整理しておく必要がある。

B 文献目録の書式

  • 単行本
    • 著者・編者名(出版年)『本のタイトル』出版社名。
    • 例:竹田青嗣(1993)『はじめての現象学』海鳥社。
  • 単行本の中の論文
    • 著者名(出版年)「論文のタイトル」編者名『本のタイトル』出版社名。
    • 例:星野英一(1993)「冷戦後の国際システムとアジア」島袋邦・我部政明編 『ポスト冷戦と沖縄』ひるぎ社。
  • 雑誌論文
    • 著者名(出版年)「論文のタイトル」『雑誌のタイトル』巻号数,頁数。
    • 例:中村尚司(1993)「会社中心社会と外国人労働者」『オルタ』5号 1993年夏),8893
  • 新聞記事
    • 「記事のタイトル」『新聞のタイトル』発行年月日。 または
    • 著者名(発行年)「記事のタイトル」『新聞のタイトル』発行月日。
    • 例:「比重軽い国際化予算」『朝日新聞』1993611日朝刊。

C 参考文献

論文を書く際に手元において参考にするのはもちろんだが,研究に取り組む前 に,下記のような文献を一度通読することが望ましい。

  • 斉藤孝(1998)『学術論文の技法 第2版』日本エディタースクール出版部。
  • 櫻井雅夫(1998)『レポート・論文の書き方 上級』慶応義塾大学出版会。
  • 妹尾堅一郎(1999)『研究計画書の考え方』ダイアモンド社。
  • 中尾浩・伊藤直哉(1998)『Windows 95版 人文系論文作法』夏目書房。
  • 中尾浩・伊藤直哉・逸見龍生(1995)『マッキントッシュによる人文系論文作法』夏目書房。
  • 花井等・若松篤(1997)『論文の書き方マニュアル』有斐閣アルマ。
  • 古郡廷治(1997)『論文・レポートのまとめ方』ちくま新書。
  • 森口親司(1999)「光る論文・レポートはこう書く」『経済セミナー』第537号(199910月)。
  • 吉田健正(1997)『大学生と大学院生のためのレポート・論文の書き方』ナカニシヤ出版。

以下は、作文技術に関する参考図書。

  • 木下是雄(1981)『理科系の作文技術』中公新書。
  • 杉原厚吉(1994)『理科系のための英作文法』中公新書。
  • 本多勝一(1982)『日本語の作文技術』朝日新聞社。

なお,以下のサイトも参考になる。

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